マット塗装は近年徐々に増え始め自動車メーカーでも純正採用され始めています。従来は特別なグレードにしか採用していませんでしたが着々とメジャーになってきている印象です。
しかしながらマット塗装に対応したコーティングはいまだに少なくオーナー様は苦労されているのではないでしょうか。
どんな理由で苦労されているか
「雨染みが付くとなかなか取れなくて・・・」
「汚れや小傷を取ろうとして強めに擦ったら、艶が出てマットではなくなった・・・」
「なんといっても手入れが大変でビックリ・・・」
などなど 皆様グロス塗装からの乗り換えで大変なことになる方もおられるようですね。
本記事では、1987年創業、カーコーティング専業一筋30余年、新車中古車の施工台数は20,000台超という経験の東京の車コーティング専門店を営む現役施行者である及川が、同業界における経験に基づく知識を踏まえ、「マット塗装のコーティングの特徴や性質」や「マット塗装のコーティングのお手入れや注意点」について解説させていただきます。
マット塗装とは
マット塗装の性質や特徴
マット(ツヤ消し)塗装は表面特性がグロス塗装と比べ微細な凹凸があり艶が低く凹凸面によごれが溜まりやすいのです。
そしてその凹凸を除去すると光沢が出てしまいます。そもそもの表面特性は汚れやすい表面になっているのです。
マット塗装が、ザラザラとした質感により汚れが雨で流れにくくなっている反面一般的なグロス塗装は表面がツルツルになっていてマット塗装よりも格段に汚れが溜まりにくい性質です。
マット塗装の弱点
マット塗装は磨けない!
マット塗装をグロス塗装のようにコンパウンドなどで磨くことは出来ません。
虫が付いたり線傷がついた場合は磨く事が出来ないので処置や対応が出来ません。
艶消し塗装の艶が出ると2度と消すことは出来ないのでお手入れが非常に大変な塗装となります。
マット塗装の表面とのマット塗装用コーティングも相性があるため、通常のグロス塗装に対応しているコーティングを塗るなどなんでもよいという訳ではありません。
普通のコーティングをすることにより艶が出てしまい、その艶を消すことが出来なくなってしまうので注意が必要です。
マット塗装の色の種類によっては板金塗装の際に色あわせが難しく非常に高価になる場合もありますので購入前には注意が必要です。
マット塗装専用コーティング
マット塗装専用コーティングは近年対応品などが少なく通常のグロス塗装などに行う製品を施工されてた業者も多く有ったと思います。
マット専用のコーティングと銘打っているコーティング以外は施工はしないでください。
マット塗装コーティング施工方法
各社色々と液剤により施工方法はまちまちです。
スプレーガンで塗布する方法や手塗りで一枚一枚丁寧に塗布をし拭き取りを丁寧にムラのないように行う施工が基本です。
当社の推奨するマット塗装専用コーティングは手塗りです。
マット塗装コーティングの注意点
マット塗装のコーティンをする際の注意点は下地に油分やコーティング成分などが無い事。塗装面に油分などが付着しているとコーティングが定着せずにマダラになる事もあります。
WAXなどはワックス成分を除去することが出来る成分のケミカル処理が必要となります。簡易コーティングなどが付着している場合は除去剤(正式なリムーバー)でその成分を除去すると良いです。
マット塗装のコーティングはムラになるととても目立ちます。ムラにならずきちんと定着させることがとっても大事な事になります。
汚れやシミが付いたと思ったすぐに洗車をすること。「イオンデポジットやスポット汚れが付いてきたなぁ〜」と思ったら、できる限り早く洗車しましょう。
汚れを放置せずに出来る限り早めに汚れを落とすために洗車をされるのがマット塗装には1番良い事です。
マット塗装コーティングの効果や耐久性
ザラザラな表面にコーティングを施工する事によりざらざらの凹凸面が平滑になる事により汚れの溜まりが減ることで汚れにくくなります。
また表層に出来たコーティング膜によりシミや水垢を付きにくくします。さらにスリック性をあげることにより汚れや色々なものに擦られる場合に滑りやすいので傷がつきにくくなります。
耐久性は各社まちまちですが概ね1〜3年前後になります。
マット塗装コーティングの価格
価格は各社まちまちですが10~30万(新車価格)が平均的価格です。価格だけで良し悪しは決まりません。アフターフォローや耐久年数、効果について吟味が必要です。おおきなポイントはコーティング自体を研磨などをせずに削除が出来るかが問題です。価格第1で選択されずに、削除出来るコーティングを主眼に置き選んで価格に反映してみてください。
マット塗装コーティングの製品やサービスの比較
マット塗装専用コーティングは強制乾燥が必須です。赤外線ヒーターなどで50ー55度くらいでの乾燥が必要です。基本的に矯正乾燥機(カーボンヒーター、赤外線ヒーター、近赤外線ヒーター)がないお店はNGかと思います。
耐久性に関して
耐久性に関しては層数や液剤の性能により1年から3年程度は必要です。その間にご自身で出来る簡易メンテナンスを行うとか、施工店で行うプロメンテナンスを行うことによりさらに耐久性が保たれることも有ります。
施工金額について
各社まちまちですがグロス塗装に対する金額とほぼ同じと思って良いでしょう。特に高価な場合は詳しく説明を求めてご納得になれるまで説明をお求めしても良いと思います。
注意点
メンテナンス施工が用意されていない施工は注意が必要です。定期的なメンテナンスによりマット塗装のコーティングは長くきれいを保てます。3,6ヶ月程度のサイクルの基本メンテナンスが行われている施工店が安心です。
マット塗装コーティングの施工事例
アストンマーティンVANTAGE F1® Edition:ホワイトマット塗装コーティング
Aston Martin VANTAGE F1® Editionに『マットセラミックコーティング』を施工しました。
ボディはマット塗装で正式名称はサテン・ルーナーホワイト (マット) Satin Lunar White。
本事例はホワイトマット塗装でしたが、マットブラック塗装にも当然ながらコーティングすることはできます。
マット塗装とグロス塗装が入り交じったエクステリアの施工事例となります。それぞれの塗装に適応したコーティングを施工いたします。
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マット塗装コーティングを施工するなら新車時が良い
マット塗装の場合は新車購入納車直後にコーティングを施工すべきです。
なぜか?
新車の塗装表面は簡易or本格的なコーティングなどが行われていないので限りなく素の塗装であり、コーティングをするには最適な時期です。
新車購入後屋外保管の場合は、排気ガスや鉄粉、汚れが付着してしまいコーティング前に汚れが固着してしまう場合があります。
新車購入後1番良い状態で下地処理を行いマット塗装専用のコーティングをされるのが1番良く、その後は専用にメンテナンスと本施工を繰り返すのが長くキレイを維持できる方法となります。
マット塗装でやってはいけないこと
いくらコーティングをしているとはいっても屋外保管などで花粉や黄砂の時期に汚れを放置しないことです。
花粉黄砂の時期や初夏位からの高速道路の虫の死骸などは放置せずに1週間に1度は洗車されてください。花粉黄砂、気温が高く通り雨などで一気に乾くのはとても危険です。
コンパウンドでの磨き、汚れをやたらに擦ること、こちらも行わないでください。
まとめ
以上、「マット塗装のコーティング」に関して解説してまいりました。
今後マット塗装の車にコーティングをする場合は以下の5つのポイントを覚えておくと良いでしょう。
1、リムーバーがあるマット塗装専用コーティングを使うお店を選びましょう。※1
2、乾燥機(カーボンヒーター、赤外線ヒーター、近赤外線ヒーター)が設置されているお店を選びましょう。※2
3、定期メンテナンスコース(3ヶ月、半年コースなど)があるお店を選びましょう。
4、5層や10層など極端な多層化コーティングは必要ないということを覚えておきましょう。
5、塗装に浸透するタイプではなく密着するタイプがおすすめです。つまりコーティングを除去出来ないものはコーティングとは言えない。
※1 コンパウンドなどの研磨で落とすのではなく専用の化学薬品でコーティングを除去出来ること
※2 大がかりな装置でなくとも、1000W×6本 6,000W以上の乾燥機があれば良し